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松井研D2の佐藤です。

2026年5月から8月までの約3か月間、デンマーク・コペンハーゲンIT大学(IT University of Copenhagen、以下ITU)のMartin Aumüller先生のもとで研究留学しました。 この記事では、留学が決まるまでの経緯から、現地での研究生活、留学中のインド・スウェーデンへの出張、そしてコペンハーゲンでの暮らしを振り返ります。

留学前

留学のきっかけは、指導教員の松井先生が、ご友人であるITUのMartin先生に私を紹介してくださったことでした。 Martin先生が私の論文を読んでくださり、「留学に来たければ、来ていいよ」と声をかけてくださったことから、今回の留学の話が始まりました。 最初にこの話を聞いたのは、2024年、私が修士1年のころです。 その後、博士課程に進学し、留学したいと松井先生に伝えたところ、予算を確保してくださり、2026年に実現することになりました。

Martin先生とは、2025年8月ごろから松井先生を交えて定期的にオンラインでミーティングをしていました。 当時進めていた研究 について、Martin先生と議論を重ね、論文の完成度を高めていった結果、この論文はSIGMOD 2026に採択されました。 その後も3人で別の研究を進め、留学前にもう一本の論文を書き上げました。 このように留学前から密に交流し、互いの関心や雰囲気を知っておくことは、留学初日からスムーズに研究を始めるうえで重要だったと感じています。

ITUでの研究

留学中の目標は、3か月間で一つの研究を進め、VLDBの8月1日の締め切りまでに論文としてまとめることでした。 Martin先生には頻繁にミーティングの時間を取っていただき、おかげで開始から2週間ほどで研究の方針が固まりました。 その際、「自分が博士課程の頃なら、ここまで進めるのに数週間はかかったよ」「とてもハードワーカーだ」と褒めていただき、とても嬉しかったことを覚えています。

北欧らしい街並み 北欧らしい街並み ガラス張りの大学と水路 初日の夜ご飯に持参した餅

初日に撮った写真。(1、2枚目)まさに北欧という街並みでテンションが上がった。(3枚目)大学はガラス張りで、すぐ横には水路が流れていた。(4枚目)初日の夜ご飯は、日本から持参した餅。

Martin先生との議論で特に印象に残っているのは、研究全体で解くべき問題やその本質を捉えながら、アルゴリズムや実験の細部まで徹底して検討される姿勢です。 実験で少しでも違和感のある結果が出ると、その理由を説明できるようになるまで調査することを求められました。 実際、そうした細かな違和感の中に、次の研究方針につながる手掛かりが隠れていることも多く、実験結果を一つずつ丁寧に理解する姿勢の大切さを、改めて学ぶ機会となりました。

5月末ごろから、KTHのIoana O. Bercea先生にも研究に加わっていただきました。 Ioana先生はMartin先生や松井先生のご友人で、以前Ioana先生が松井研に訪問された際に、私の研究についてアドバイスをいただいたこともありました。 今回の研究もIoana先生の研究分野と関係が深く、協力していただけるのではないかということで、Martin先生が紹介してくださいました。

また、ITUの他の先生方や学生の方々とも、度々研究について議論する機会がありました。 学内では、アルゴリズムに関するセミナーが度々開かれており、学生や先生方が自身の研究について発表していました。 計算量の下界やNP困難性など、理論計算機科学に関する話題が多く、まさにアルゴリズムつよつよの人たちの集まりという感じで、とても勉強になりました。 5月末には、私もそのセミナーで発表する機会をいただき、皆さんからいただいた質問や意見は、その後の研究を考えるうえで大いに参考になりました。

最終的には、当初目標としていた8月1日の締め切りには間に合わず、それ以降の締め切りに投稿することになりました。 研究への理解が深まるにつれ、新しい手法や検討すべき方向性が見えてきて、当初の想定とは少し異なる形で論文をまとめる必要が出てきたためです。 締め切りに間に合わなかったことは悔しくもありますが、より良い論文にするために必要な過程だったとも考えています。

Martin先生が最終日にケーキをごちそうしてくれた 救世主教会の塔の上からの景色 夕方。右奥に見えるのが救世主教会の塔 最終日の夜ご飯は近所のタイ料理屋さん

最終日に撮った写真。(1枚目)最終日にMartin先生がケーキをごちそうしてくれた。(2枚目)救世主教会の塔の上からの景色。(3枚目)夕方、右奥に見えるのが救世主教会の塔。(4枚目)最終日の夜ご飯は近所のタイ料理屋さん。

留学中の二つの出張

留学期間中には、デンマーク国外に二度出かけました。

一つ目は、6月にインドのバンガロールで開催されたSIGMOD 2026への参加です。 留学前にMartin先生と共同で執筆した論文「Mathematical Foundations of Poisoning Attacks on Linear Regression over Cumulative Distribution Functions」を発表してきました。 国際会議でのオーラル発表は初めてで緊張しましたが、なんとか無事に終えることができました。 また、私の主な研究分野であるLearned Indexに関する論文も複数発表されており、同じ分野の研究者と直接話す貴重な機会にもなりました。 さらに、大阪大学の天方先生と佐々木先生の研究チームの方々ともお会いし、夕食をご一緒するなど、親しくしていただきました。 データベース分野の国際会議に参加するのも初めてでしたが、雰囲気を知り、研究者の知り合いも増え、とても良い経験になりました。

オーラル発表 ポスター Cultural Program 天方先生・佐々木先生チームの方々との食事会

SIGMOD 2026。(1枚目)オーラル発表。(2枚目)ポスター。(3枚目)Cultural Programでインドの古典舞踊・民族舞踊が披露された。(4枚目)天方先生・佐々木先生チームの方々との食事会。

二つ目は、7月のKTH訪問です。 Ioana先生とはそれまでオンラインで何度も話していましたが、Martin先生が休暇を取られている間、Ioana先生のもとで研究を進めることになりました。 数日間にわたり、研究の理論面を中心に、かなり密度の濃い議論を重ねました。 特に印象的だったのは、Ioana先生との議論を通じて、それまで個別に考えていた結果が一つの研究のストーリーとして整理され、主張の筋道や説得力が一気に明確になっていくことです。 また、理論的な議論を次々と展開される姿から、圧倒的な数学力を感じ、刺激を受けました。 昼には日本食や韓国料理など、Ioana先生おすすめのレストランでごちそうになり、午後にはケーキを食べ、翌朝からまた議論を再開するという、とても充実した研究訪問でした。

KTHの校舎 Ioana先生に連れて行ってもらった日本食 Ioana先生に連れて行ってもらったラーメン フィーカ

KTH訪問。(1枚目)KTHの校舎。ITUとは雰囲気が異なる、煉瓦造りの校舎が美しかった。(2、3枚目)Ioana先生に連れて行ってもらった日本食屋さん・ラーメン屋さん。(4枚目)フィーカ。毎日午後3時ごろにケーキやパンをごちそうになった。

コペンハーゲンでの暮らし

ITUでは、先生方や学生の皆さんがとても温かく迎えてくれました。 研究グループでは毎日皆でランチを食べるのが習慣になっており、研究の話から何気ない雑談まで、さまざまな話をしました。 また、毎週金曜日の午後には大学でビールパーティーが開催されており、ビールを飲みながら卓球やテーブルサッカーを楽しみました。 ほかにも、バーベキューやクライミングに誘ってもらうなど、研究以外でも皆さんと交流する機会が多くありました。 英語での会話にうまく入れないこともありましたが、皆さんが何度も声をかけてくださったことが嬉しく、慣れない土地でも安心して過ごすことができました。

学食はバイキング形式 毎週金曜のビールパーティー 駐輪場の脇にある卓球台 深夜のITU

ITUでの日々。(1枚目)学食はバイキング形式。(2枚目)毎週金曜のビールパーティー。(3枚目)駐輪場の脇にある卓球台。(4枚目)深夜のITU。

研究以外の時間には、コペンハーゲンの街を歩くのも楽しみでした。 運河では白鳥をよく見かけ、晴れた日には公園の芝生で日光浴を楽しむ人たちの姿もあり、街ののどかな雰囲気が印象に残っています。 高緯度のため夜10時ごろまで明るく、遅い時間まで外を歩くこともありました。 物価の高さには驚きましたが、デニッシュやクロワッサンがおいしく、ベーカリーには何度も足を運びました。

ベーカリー カフェ アイスクリーム屋さん 自炊はほとんどパスタ
留学中好きになった烏 留学中好きになった烏 コペンハーゲンの街並み Hoptimist

コペンハーゲンでの日々。(1枚目)ベーカリー。(2枚目)カフェ。(3枚目)Martin先生にごちそうになったアイスクリーム。(4枚目)自炊はほとんどパスタ。(5、6枚目)6月に米津玄師の「烏」がリリースされてから、街で烏を見かけると写真を撮るようになった。(7枚目)コペンハーゲンの夜景。(8枚目)デンマーク発祥のデザインオブジェ、Hoptimist。1つ購入した。

一方で、準備不足を感じる場面もありました。 5月は予想以上に寒く、厚手のコートを持ってくればよかったと後悔しました。 また、日本から「電子レンジでお米を炊ける容器」を持参したものの、現地に着いてからアパートに電子レンジがないことが判明し、一度も使わずに持ち帰ることになりました。 英語についても、もっと勉強しておけばよかったと感じています。 特に複数人での会話や、にぎやかな場所でのリスニングには苦労しました。 それでも、周りの人に助けてもらいながら、3か月間を無事に過ごすことができました。 準備はもちろん大切ですが、分からないことや困ることがあっても、その都度考えたり、人に頼ったりすれば、なんとかなるという気持ちを持てたことも、今回の留学で得た感覚の一つでした。

最後に

振り返ると、とにかく研究に没頭した3か月間でした。 予定どおりに進まないこともありましたが、帰国するときには、自分なりにやり切ったという充実感がありました。 また、初めての海外での長期生活を通じて、慣れない環境でもなんとかやっていけるという自信も得られました。 留学の機会を作り、予算を確保してくださった松井先生、現地で温かく迎えてくださったMartin先生・Ioana先生、そして今回の留学を支えてくださったすべての皆さんに、改めて感謝します。