こんにちは、松井研元B4の矢島です。この度、松井先生をはじめ多くの方々のおかげで、卒論の内容をまとめた論文 PINE: Pruning Boosted Tree Ensembles with Conformal In-Distribution Prediction Equivalence がICML 2026の本会議に採択されました。本記事では、ICMLで過ごした1週間の中で印象に残ったことをまとめようと思います。

研究室の方々と集合写真

全体概観

ICML 2026は、韓国の首都ソウルにあるCOEXで開催されました。最終的な投稿数は24,661件と、昨年のICMLからなんと約2倍(+98%)に増加しており、近年のAI関連学会への関心の高さと、生成AIの発展による論文数の増加傾向がうかがえました。

オープニングで示された投稿数の推移

対面参加者数も20,456人(!)を記録し、会場には溢れんばかりの方々が集まっていました。ポスターセッションが始まる時間には、会場に入るための長蛇の列ができており、とても驚きました。コーヒーブレイクの時間には、研究者たちが軽食を囲みながら、あちこちで熱い議論を繰り広げていました。

ポスターセッション前の会場の混雑 コーヒーブレイクの様子

ポスターセッション前の会場の混雑(左)と、コーヒーブレイクの様子(右)

会場はあまりにも巨大で、なるべく多くのポスターや発表を見て回ろうと心がけた結果、1日2万歩近く歩いていました。とても疲れましたが、その分充実した1週間でした。

会期中の歩数記録。毎日2万歩近く歩いていた

こうした投稿数の急増を受けて、今年のICMLでは新たに2つの施策が実施されていました。

  1. Googleが開発した Paper Assistant Tool によるAIレビュー
  2. レビューにおけるLLM使用のポリシー

1つ目のAIレビューは、投稿締め切り前に、レビュアーには公開されない形で自分の論文をAIにチェックしてもらえる仕組みで、人間によるレビューの前にある程度のミスを指摘してくれます。私も利用してみたのですが、テスト段階のためか出力形式の崩れが目立ったものの、的を射た指摘も多く、実際にいくつかの指摘をもとに論文を修正しました。

2つ目のLLM使用のポリシーは、自分の論文のレビューにLLMを使用して良いかどうかを、著者が事前に指定するものです。このポリシーは自分がレビューを行う際にも適用され、例えば自分の論文へのLLM使用を許可しなかった場合、他人の論文をレビューする際にもLLMを使用してはいけない、と決められています。最終的にLLMの使用を許可しないことを選択したのは全体の16.4%で、興味深いことに、許可の有無によって採択率は変わらなかったそうです。さらに、LLMの使用を許可しない論文には「レビューに特定の文言を入れろ」というプロンプトインジェクションが仕込まれており、これに引っかかってポリシー違反が発覚したレビュアーの関わる論文はデスクリジェクトされました。

レビューにおけるLLM使用ポリシーの説明

ポスター発表

今回発表した研究について簡単に紹介します。決定木アンサンブルは、スプレッドシートやデータベースのような表形式のデータに対して広く使われている機械学習モデルですが、木の数が多くなるほど、推論にかかる時間が増えたり、どのような分類規則が使われているかという解釈性が損なわれたりするという課題があります。そこで木を削除してモデルを小さくすることを考えますが、木を削除すると出力の予測が変わってしまう可能性があります。予測を変えないように木を削除する既存手法は、現実にはあり得ないような入力に対してまで予測の一致を求めるため、圧縮率に限界がありました。我々の提案手法PINEは、Conformal Predictionを用いて現実的な入力の範囲を統計的な保証付きで推定し、その範囲内でのみ予測の一致を保証することで、予測をほとんど変えずに、既存手法よりも最大30%圧縮率を改善しました。詳細はプロジェクトページをご覧ください。

既存手法(左)と提案手法PINE(右)の比較。
現実的な入力の範囲(緑色)に対してのみ予測の一致を保証することで、より多くの木を削除できる

私の発表は、本会議1日目の午前、最初のポスターセッションの枠でした。会場を見渡すとLLMやAIエージェントなどのナウい研究が多く、決定木アンサンブルというクラシカルなモデルの研究を見に来てくれる人がいるのか心配でした。しかし実際には、自分の想像よりも多くの方がポスターに来てくださり、たくさんの議論をすることができました。中には同じく決定木アンサンブルを研究している研究者の方や、業務で決定木アンサンブルを使っているフィンテック企業の方もいらっしゃり、自分の研究を評価してもらえた経験は大きな自信につながりました。

ポスター発表の様子

AIの発展について

ポスター会場の外にはジョブボードが設置されており、大手からスタートアップまで、たくさんの企業がAIに関連するリサーチャー・エンジニア職を募集していました。巷ではAIに仕事が奪われるという話が広がっていますが、このボードを見る限り、もうしばらくAI関連の仕事の需要は続くのではないかと感じました。

求人の張り紙で埋め尽くされたジョブボード

6つあるinvited talkのうちの最後、Arvind Narayanan先生による”What will be left for us to work on?”という講演では、AIが知的作業を担うようになったとき、私たち人間には何の仕事が残るのかが論じられました。中心的な主張は、AIによって人間の仕事が一括して消えるのではなく、仕事の重心が単に実行することから、目的を決め、評価し、責任を持つことへ移っていくというものです。AIがコードや論文といった成果物を大量に生成できるようになるほど、何を作るかを決め、出力を評価し、結果に責任を持つという人間の役割はむしろ重要になる、という指摘が印象に残りました。講演の最後には、目指すべきはAI単体の超知能ではなく、AIによって増強された人間が超知能に近づいていく”co-superintelligence”である、というビジョンが示されました。

講演で示されたco-superintelligenceのビジョン

その他

会議以外の時間には、世界中の才能あふれる研究者の方々と交流することができました。興味のある研究者に自分から連絡を取ってコーヒーチャットをしたり、逆に連絡をくださった方とお話ししたりしたほか、夜にはミートアップにも参加しました。研究の話題はある程度ついていくことができるのですが、雑談などはまだまだ理解できない部分が多く、もっと英語力を鍛えてコミュニケーションへの不安をなくしたいと感じました。

交流だけでなく、研究面でも大きな収穫がありました。ポスターセッションを通じて幅広い分野の研究をまとめて見て回ることができ、最近のトレンドや今後の研究に活かせそうな技術を知ることができました。今回の経験を活かして、より面白い研究ができるように努力していきたいと思います。

改めて、卒論生として一年間ご指導いただいた松井先生、および様々な面で支えてくれた研究室の方々、そして家族に感謝します。ありがとうございました。

ICML 2026看板の前で