ACMMM2024 参加記
こんにちは、松井研D2の李映萱と申します。Mantra株式会社でのインターン中に取り組んだ論文「Zero-Shot Character Identification and SpeakerPrediction in Comics via Iterative Multimodal Fusion」がACMMM2024 (MM24)で採択され、その結果、2024年10月28日から11月1日までオーストラリアのメルボルンで開催された会議に参加し、オーラル発表とポスター発表を行いました。この記事は、MM24に参加した感想です。
ビザについて
この章は中国籍の方向けのビザ申請のアドバイスですので、日本人の方はスキップしてください(参考用に日本語訳も添付しています)
中国パスポート保持者は、ヨーロッパ、北米、オーストラリアへ行く際にはビザが必要です。特に独身女性にとっては、ビザが拒否される可能性が高いです。また、日本からの申請は基本的に第三国の大使館が審査を行うため、提出された資料の信憑性が検証しにくく、ビザ取得が一層困難になります。
以前、国際会議に参加するためにカナダビザを申請した際には、最初の申請が拒否されました。しかし、その後、異議申し立てと追加資料の提出により、拒否記録が残らずにビザを取得することができました。今回のオーストラリアビザ申請では、数ヶ月前のカナダビザ申請の経験を活かし、必要な資料に加えてカバーレターを書き、多くの補足資料を添えて提出しました。最終的には無事にオーストラリアビザを取得しました。以下はその時のカバーレターの概要です:
- 訪問目的と必要性の説明
- オーストラリア訪問の目的は国際会議への参加であり、MM24の公式ウェブサイトのURLを添え、会議の開催時期と場所について詳細に説明しました。また、MM24の登録完了確認メールと招待状を添付しました。
- 私の論文がMMに採択され、さらにオーラル発表となったことを証明するため、論文が掲載されているOpenReviewのURLを添付しました。そして、第一著者として現地での研究紹介が必要であること、またこの機会が私の学術的なキャリアおよび将来の展望にとって非常に重要であることを述べました。
- 資金的に十分なサポートの証明
- 以前のカナダビザ申請時は東大が費用を負担していたため、研究室の秘書さんに東大から、「東大が私のカナダへの往復航空券およびカナダでの全費用を支払う」ことを証明する書類を取ってもらいました。今回の論文はMantraでのインターンワークであるため、MantraのCEO、石渡さんに似たような証明書を作ってもらいました。
- その他、東大でRAとして働いていることの証明書と私の銀行口座の入出金明細を提供し、安定した収入と資金サポートがあることを証明しました。
- 定刻に出国する保証
- オーストラリア行きのスケジュールを具体的に説明しました。東京からメルボルンへ行く日とメルボルンから東京に戻る日を明記しました。航空券を購入するとビザの取得確率が上がると言われますが、ビザ申請時に航空券は必須ではありません。ビザが拒否された場合、チケットが無効になるリスクがあるため、ビザの許可が下りる前にチケットを購入することは慎重に考えるべきだと思います。
- 日本とのつながりを強調しました。必ず日本に戻って博士課程を完了すると述べ、東大の在学証明書と成績証明書を提出しました。また、東京のマンションで飼っている猫がいて、会議の後は一刻も早く日本に戻りたいと言いました。
- 母国にいる家族とのつながりも強調しました。私は一人っ子で、卒業後は両親の世話をするために帰国する予定だと述べました。
まとめますと、初めからできるだけ資料を完備しておくことをお勧めします。ビザが拒否された場合でも、落ち着いて積極的に異議を申し立てましょう。この記事を読んでいる皆さんが無事にビザを取得できることを心から願っています!
MM24全体について
毎年多くの中国人が参加することでお馴染みのACMMMには、今年の中国人参加者は全体の約8割を占めました。私にとってこの状況の最大のメリットは、オーラルセッション後やポスターセッションで中国語で研究を議論できることです。お互いが母国語を使うことで、より効率的にしかも深いところまで議論することが可能になり、多くの貴重な意見やアドバイスを得ることができました。また、国際会議に参加することで英語でのコミュニケーション力も鍛えられ、英語で話す自信がつきました。
さらに、ACMMMはマルチメディア分野のトップ会議であり、参加者同士の研究テーマが近いため、他の会議と比べて関係性がより緊密でした。この度は相澤先生、山崎先生、山肩先生、そしてMantraの日並さんと共に会議に参加し、会場で多くの知り合いに再会するとともに、お互いの知り合いを通じて新しい出会いもできました。私は学会の主な目的が交流であると考えており、この会議を通じて多くの人々とのつながりが生まれ、多くの刺激を受けた貴重な経験でした。
自分の発表について
自分の発表は本会議の最終日にありました。以前、ラボミーティングや日本国内の学会で同じテーマについて何度も発表した経験はありますが、英語でそれを話すのが初めてでした。しかも今回の内容が複雑で10分間に収めるのが難しく、発表前日までスライドの修正に必死でした。日並さんが前日の企業セッションで私の論文を紹介してくれたおかげで、東大の先生方や先輩たちも含め、多くの人が私の発表を聞きに来てくれました。その結果、割と多くのリスナーがいるセッションとなりました。
発表前にドラフトを書き、練習した後も多分問題ないと思っていましたが、当日はやはりかなり緊張しました。自分は緊張すると話が速くなる癖があるため、あえて練習しすぎないようにしました。発表中も意識的に話すスピードをコントロールし、リスナーとのインタラクションも心掛けました。最終的にはちょうど10分で発表を終えることができ、質問にもちゃんと(?)答えることができ、ほっと胸を撫で下ろしました。
午後のポスターセッションでは、参加者の多くが中国人であったため、中国語でコミュニケーションが可能なポスターは特に人気がありました。セッション中、多くの人が私のポスターを見に来てくれ、私の論文を読んでわざわざ訪れた方もいて、とても嬉しかったです。リスナーに応じて中国語、日本語、英語で研究を説明しました。2時間立ち続け、3言語を使い分けながら話し続けたので、終わった後はかなり疲れました(笑)
今回の発表で最も面白いと思っていたのは、異なる国々の思考回路の違いを感じ取ることでした。中国の方々が出した質問は、私がこれまでに参加した日本国内の学会で聞かれたことのないもので、しかも驚くほど似ていました(ちなみに、以前の日本国内の学会で日本の方々が出した質問も似ていました)。私の研究は、漫画の画像のみでキャラクター識別とセリフの話者推定を行うもので、機械が画像情報と複雑なテキストを高度に理解する能力が求められるため、非常に挑戦的なタスクになります。しかし、日本の漫画に詳しくない人には、このタスクの難しさを短い言葉で伝えるのが難しいです。それについて、私と日並さんは論文のイントロの書き方を何度も修正しましたが、投稿時のレビューアーからも今回現地にいた人たちからも、一番よく聞かれた質問は研究の難点が何かということでした。毎回時間をかけて説明すると、今回のタスクが難しいことを納得してもらえましたが、この点をいかにシンプルに伝えるかはまだ課題です。自分は自分の研究に馴染んでいるため、執筆時に自分の思考パターンに陥ることがありますが、今回の直接の交流を通じて、読者が論文を読んでいる時に何を考えているかを直感的に理解することができ、今後の論文執筆に大きな参考となりました。
メルボルンについて
メルボルンの市街地は小さく、半日あれば歩いて一通り見て回ることができます。メルボルンで過ごした数日間、日本や中国とは全く異なる地域の風土や文化を感じ取ることができました。オーストラリアの暖かい日差しと地元の人々のリラックスした雰囲気がとても気に入りました。今回のMM24参加を通じて、世界のもう一つの側面を見る機会を得て、異なる生活を体験できたことに感謝しています。
最後に
Mantraでのインターンワークは、過去1年間で3つのトップカンファレンスに投稿し、投稿ごとに実験結果や論文の書き方が大きく変わり、毎回ほぼ前回とは完全に異なる論文を出しました(笑)。そのために一生懸命頑張りましたし、大きなプレッシャーも感じました。日並さんがお忙しい中で一文一文を丁寧に修正してくださったことに深く感謝しています。二人で一つの段落について意見が異なることもありましたが(もちろんほとんどの場合は日並さんの方が正しかった)、毎回の議論を通してお互いが納得するより良い表現を見つけ出すことができました。日並さんからは色々なことを学び、心から感謝しています。また、松井先生と相澤先生からも多くの貴重な意見をいただき、本当にありがとうございました。
ACMMMに投稿する前から、今度こそ勝算があると感じ、レビューが出た後も自信を持っていました。しかし、リバッタル後にスコアが2点上がり、さらに採択率4%未満のオーラル発表に選ばれるとは思ってもみませんでした。過去1年を振り返ると、本当に困難な道のりだったと感じますが、このMM24での経験は、過去の努力に終止符を打つには最適な場でした。これからは、今回の投稿と参加経験を活かして、より優れた研究を進めることを目指したいと思います!